前回まで受注設計生産型製造業の特徴について述べてきましたが、今回はその特徴から発生する課題構造について述べていきたいと思います。
1.顧客市場のライフサイクルでの課題について
製品売価は高いのですがその顧客とする市場の成長性によって大きく左右されてしまいます。日本の近代工業の成長を考えれば直ぐ判りますね。製糸業等の軽工業から始まって、重工業、化学工業それから自動車、電子部品と日本の主体とする産業はどんどん変わってきました。
したがって、製糸用の製造機械を作ったとしても日本に需要はありません。鉛筆や万年筆も同様です。
その顧客の成長によって左右される訳ですが、成長に合わせてどんどん新規参入が相次ぎ市場も大きくなるのですが、競合メーカーも当然にように増えてきます。また、産業の成長も日本だけで考えるわけではなく、韓国、台湾、中国を初めとしたBRICSへとどんどん顧客市場そのものが変わっていきます。
典型的な例が半導体になると思います。1980年代はNEC,東芝と家電業界はほとんど猫も杓子も参入し、生産量と品質、価格で本家本元のアメリカを追い抜いたのですが1990年代以降韓国サムスン電子、台湾AUOなど海外メーカーが台頭すると共に今や日本でDRAMを作っているのはエルピーダメモリーだけという状況です。その間、ニコン、キヤノン、東京エレクトロン、ULVAC、アドバンテスト等の装置メーカーは顧客が代わろうと関係なくシリコンサイクルの需要変動を耐えしのぎながら生き残ってきました。装置メーカーも色々参入してきましたが、半導体の技術進歩に開発が追いつかなかった企業もあり、生き残っている企業はかなり大規模な企業だけとなり、製造プロセス単位での装置メーカーの寡占化、独占化が進んだ結果となっています。
2.ビジネスモデルでの課題について
詳細については次回以降にふれますが、製品単価が高く受注機会も毎日あるという事ではない為、一般消費者向けの製品とは桁違いに受注機会は少ないですね。
したがって、顧客市場の需要変動はもちろんですが、非常に生産が極端に変動してしまう所謂フロービジネスです。需要のピークに自社の資源を合わせると、ボトムでは思いっきり人が余って、極端な場合は工場のペンキ塗りと草むしりなんてことになってしまいます。
この為、製品の販売というフロービジネスだけでは会社として存続するのはリスクが高すぎる為、並行してストックビジネスの仕組みを立ち上げなければなりません。
ここで重要なのがアフターサービス市場です。
よく考えて頂きたいのは顧客は装置を購入した時点では自社に何も寄与していないのです。装置を動かして自社の製品を作りだして初めて売上と利益を出せるのです。すなわち、顧客は製品を廃棄するまで動かし続けて投資コストを回収できるのです。
装置メーカーの売り逃げがそもそも許されるはずもありません。特に、装置が高精度になってくると顧客が修理すること自体難しいだけでなく、修理のできる要員も確保し続けることが難しくなっているわけですから。
顧客にとってもこのように重要なアフターサービスですが、ストックビジネスとしても最も重要になってきます。典型的な例がコピー機です。本体価格ではほんの数百円しか儲かっていない?と言われていますが、トナーや紙を除いた消耗品で利益をだしているというのは結構知られていますよね。
また、このストックビジネスを築く為には市場でそれなりの販売シェアを取ることが重要です。シェアを取って販売台数を稼げばサービス部品の在庫も置けるし、サービス要員も増やすことができます。
結果として顧客にアフターサービスでの利便性を評価してもらって次の製品販売につなげることができますから。
ビジネスモデルとしてのフロービジネスの課題はありますが、如何にストックビジネスのサイクルをつなげて回せるようになるかが重要です。シェアを確保すること以外に、例えば、コピー機ではトナーが企業機密になっていて特許もプロセスのブラックボックス化を図りトナー交換に伴うアフターサービスの市場をしっかり守っています。しかし、エレベーターではメンテナンス専門会社にアフターサービスを奪われることが発生し、メンテナンス不良による死亡事故を引き起こすようなことになっています。
それでは次回は個別に課題について述べていきたいと思います。

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