2008年8月15日金曜日

サービス産業の生産性向上について(第13回)顧客満足度とクレーム対応

前回までに、サービス市場開発、サービス商品開発、サービス人材開発について述べてきました。
製造業の場合にないという訳ではありませんが、サービス業の特性としてお客様もサービスの構成要素であることから顧客満足度とクレーム対応の問題については不可分なのでこれについて述べさせて頂きたいと存じます。

1.顧客満足度そのものについて
 サービス商品の開発のところで述べましたが、顧客の期待感をサービス商品がどう価格を含めて上回るかということが、すなわち顧客満足度となります。
 ところで、ここで問題となるのはサービスというのが供給側だけではなく、サービスを受ける顧客側によって例え全く同じサービスであっても変わるということです。
 サービス商品の例でも述べましたが、リゾートホテルに初めて来た顧客(一生に一度で良いからと期待して)と何度も来ている富裕層と思われる顧客では全く期待度も異なりますね。
 それだけでなく、その顧客個人でも体調や天候、心理的な状態などによって満足度というか評価も変わってきます。

2.顧客満足度の評価について
 顧客満足度をどう評価するか?というのも難しい課題です。端的に評価が悪ければ、顧客は二度と来ないということにもなりますし、クレームへと繋がる場合もあります。
 積極的に評価を実施することになりますと、アンケートが最もポピュラーな方法となると思います。アンケートの回収率をあげたり、目的とした満足度を測定する内容を得る為のアンケートの方法については様々な方法がありますが、このブログでは省きますね。(口頭、アンケート用紙、ネットでの書き込み、外部機関への委託など)
 ただし、どんな方法であれ定期的に実施することが重要です。気まぐれに実施したのではその時点の評価が本当に正しいのか?また今後のサービスの改善を実施するにあたっての計画立案のデータとして活かすことができません。

3.顧客クレーム対応について
 この顧客クレームで重要なのは迅速な対応とそれによる顧客からの信頼度向上を図るということを目的とすることです。もっとも、困るのが何も言わないで二度と来なくなる顧客ですから、クレームを申し入れてくる顧客はまず継続的なサービスを受けてくれる顧客であると認識することが重要です。
 ただし、クレームモンスターという困った存在もありますので、対応はまた別となります。
 1)パターン化
 対応については個々の従業員がバラバラのレベルで対応するのではなく、ある程度パターン化しておくことが必要です。そのパターン化により対応スピードが速くなり、顧客の不満もかなり解消することができます。典型的な例としては飛行機のフライトですね。飛行機が出発する時点で、目的地の空港に降りられない場合は代替空港もしくは出発空港に戻ることを説明していますし、代替空港に到着したらしたでどう目的地までにお客を誘導するのか費用をどうするのかが決められています。
 2)権限委譲
 このパターンを決めた上で更に従業員個人もしくは上司としてどこまで対応できるかの権限を委譲しておくことが重要となります。よく発生するのが、顧客が権限のある人を引っ張りだそうとすることですね。クレームモンスターでない限りは顧客は不満を解消してくれれば満足するわけですから、従業員の裁量にはばを持たせておけば、顧客を待たせて更に不満を増やすということは少なくなる訳ですね。

というところでまた次回

2008年8月14日木曜日

サービス生産性の向上について(第12回)人材育成

前回サービス商品の開発について述べましたが、サービスの場合の特殊性としては顧客とサービスを供給する主体が同時に存在して始めてサービス自体が成立するということがあります。従って、サービス商品の開発にあたってはサービス供給の主体である従業員の人材育成が非常に重要となっています。

1.サービスの目的の認識 
 サービス供給主体の従業員(もちろん経営者も含まれます)が、供給するサービスの目的は何かということをはっきり認識してもらうことが必要となります。
 すなわち、お客様は誰でありお客様は何を求めてサービスを受けようとしているかということですね。
 例えば、老舗旅館であれば温泉や料理も目的ですが、そこで得られる雰囲気や応対を満足し、そのことにより精神的なリラクゼーションや充足感を得たいということになりますよね。

2.役割の明確化 
 このお客様の目的を捉えてサービス商品として自分の行動(立ち振る舞い)を如何にすべきかを教育し、それぞれの役割を果たすことができるように誘導することになりますね。
 役割を明確にすることで無限に広がりがちとなる、従業員のプレッシャーを分散することができます。また、役割を明確にすることによりお客様へのサービス商品のタイムリーな供給ができることになります。 この明確化によりサービスがお客様と最前線で接するフロントサービスとこのフロントサービスを支援する支援サービスに区分されることになります。
 もちろん、零細規模(支店などを含む)の場合は、あまり明確することは必要でないですし、お役所仕事ではありませんから、臨機応変に従業員が対応することが必要です。 この為にもサービスの目的を従業員全員に認識してもらうことが必要です。例えば、デイズニーランドにおける掃除要員はそうですね。施設での道案内や写真撮影などはもちろんですが、お客様の目的を隅々まで理解させられていることが直ぐ判りますね。

3.フロントサービスについて 
 サービス商品の開発と同時に関わることですが、お客様の最前線であるフロントサービスにおいては従業員はお客様個人に合わせたカスタマイズをすることが期待されます。
 もちろん、サービス料金の範囲という制約条件はありますが、このカスタマイズによってサービス商品は進化、差別化ができてきます。このカスタマイズが従業員一人一人で異なることはやむを得ませんが、これをできるだけ同じレベルに保つことが企業としての役割になるでしょう。
 この為に、成功事例や失敗事例を朝礼や終礼などで共有し、優秀なサービスを供給できた従業員は表彰するなどということですね。

4.支援サービスについて 
 フロントサービスを支援する訳ですが、これはフロントサービスとは逆にできるだけ標準化、共通化、合理化することによって大量供給やサービス商品のコストダウンに貢献させることが重要となってきますね。 したがって、支援サービスにおいてはこの目的に対してどう貢献できたか、改善を提案できたかということが従業員の評価となりますね。

ということでまた次回

2008年8月13日水曜日

サービス産業生産性向上について(第11回)サービス商品開発続き

前回はサービス商品開発を供給者側の立場(=如何に収益を上げるか?)という視点で語ってしまいました。本来の顧客視点で商品開発を語らなければいけません。順番が逆にになっていまいましたね。

1.サービス商品の魅力度
 サービスを受けたいと思わせる魅力度がなければ、やはりサービスは始まれません。
 1)顧客期待度<サービス魅力度
 ここで魅力度とはお客様の期待するものに対してどの程度上回るのか?継続できるのかが課題となります。また、期待を裏切るほど魅力度が高いサービスというのはサービスを受ける為の費用にも関係しますね。ビジネスホテルとリゾートホテルでは期待度が全く異なりますからね。
  事前に顧客に期待度はホームページやチラシ、価格表、店構えなどで確認できる必要があります。レア度を狙えば全てを隠すということはありえますが、一般的なサービスを供給する場合は顧客に見えることが必要ですね。敷居が高いと顧客は避けてしまいますから。
 2)差別化の為のユニークであること
  魅力度そのものについては他のサービスや競合先と如何に差別化できるか?ということに尽きると思います。何が他のサービスと優れているかを顧客が語れなければいけません。特にユニークであるということが必要です。この場所、この人でなければこのサービスを受けることができないというところがないと簡単にまねられてしまい、魅力度が喪失してしまいます。
 3)継続して魅力度を向上すること
 問題なのは一度成功してしまうと、そこに安住してしまい魅力度が薄れてしまうといことです。典型的な例はバブル時期にできて大半が消えてしまった屋外型のアトラクション設備です。まともに残っているのは東京デイズニーランドだけと言えるでしょう。
  前回に述べた繰り返し化できる魅力度を供給し続けるという企業努力不足というところです。

2.サービス料金
  魅力度に付随しますが、やはりサービス料金というのは大きな構成要素になります。たとえばリゾートホテルであれば高ければ高いほどステータスがあがり、一生に一回はあんなホテルに泊まってみたいと思わせることが必要ですし、逆に100円ショップのようにこの料金でこの商品サービスということで料金の安さから魅力度を出すというやり方もありますね。
 1)料金体系の設定
  料金体系とサービス商品体系を考えることは重要ですね。ほとんどの場合はそのサービス商品にかかわる材料費というよりも技術料金であると言えるでしょう。例えば、理美容の料金はカット、シャンプー、パーマ、ヘヤカラーなどのサービス商品と料金体系がはっきりしているだけでなく、サービス商品そのものも利用客にとっては判り易いものになっています。逆に、日本だけの特殊性かもしれませんが、携帯電話の料金体系は全く不可思議な体系になっています。
 2)スイッチングコストとしての料金設定
 松竹梅の料金体系などは昔の人は良く考えたものです。料金体系によりそのサービス内容がある程度判り、安い料金でまずその一部を経験してもらうことが可能です。
  もちろん、無料お試しコースというのもありえますね。顧客に今までのサービスや競合先から切り替える為の料金設定が必要となります。携帯電話のMNP(番号ポータビリテイサービス)における、切り替え料金のキャッシュバックサービスなどは更に積極的なものです。

ということでまた次回へ

2008年8月12日火曜日

サービス産業生産性向上について(第10回)サービス商品開発

ターゲット市場を分析して、これぞという市場に新規参入するもしくは支店を出店することになる訳ですが、メーカーの製品にあたるものとしてサービス商品の開発をしなければなりませんね。

1.サービス商品の開発ポイント
  サービス商品は無形であるがゆえに保存することも在庫することもできませんし、その場で消費されます。もちろん、旅館、理美容、医療、エステなど様々なサービス商品について個々に合わせて述べるのは大変ですので、共通した考え方として述べていきたいと思います。
 1)需要の分散化
   この為、需要のバラツキによってお客様を待たせたり、逆にサービスを提供する従業員を余らせたりすることになります。
   この需要変動の偏りを抑え分散化させないと、待たされたお客様は競合のサービスをする会社や店舗に逃げて受注機会を失うだけでなく、そのままとなってしまいます。もちろん、その逆に従業員が余ると固定費である人件費を回収できなくなります。
   したがって、需要を分散化させる為にはお客様に閑散期にサービス商品を購入してもらうことが必要となります。
   その為には閑散期のサービス商品を購入してもらう為のメリットを作ることが必要となります。例えば、ホテル、旅館、旅行パッケージ料金は代表例でしょう。休日やゴールデンウイーク、盆正月は割高料金、逆に平日や谷間となる時期にはお得料金の設定などです。
  2)繰り返し化
   需要の分散化と共通することになりますが、繰り返しお客様に利用して頂くことで売上規模の拡大と売上の安定化が図られますね。
   所謂、「おなじみさん」の獲得をする為のサービス提供となります。例えば、ポイントサービスなどが一般的ですね。
  3)ハード化
   繰り返し化を更に進めるのがハード化です。サービスという無形なものをハードにして保存や在庫をできるようにすることです。例えば、英会話や予備校のレッスンをDVDにして販売することなどです。

ということで出かける時間が迫ってきたので次回へ

2008年8月10日日曜日

The post-american worldを読んで


 久しぶりというか30年ぶりというぐらい原書を購入しました。夏バテの私のとって仕事もたまっていましたが、夏休みに読むべき本としては非常に良かったのではないかと思います。
 The post-american world(著者FAREED ZAKARIA、WWNORTON社2008年4月発行、ISBN978-0-393-06235-9)という本はインド出身のニューズウイークの記者が書かれた本ですが、久しぶりに英語を原書で読んだ私にとっても辞書のお世話になることも少なく平易な英語(米語というよりやはり著者はインド出身なので英語という印象でした。)で助かりました。
 アメリカの国家権力を歴史的に大英帝国との比較だけでなく、古代のインドや中国もちろん近代のインドの考察から踏まえて的確に語られていると思いました。
 パウエル氏が孫との休暇の間にトルコとスペインの戦争になりかねない紛争(私はこの扮装は全く知りませんでしたが、日本では新聞ネタにもならかったのではないでしょうか?)をちゃっちゃと片付けてしまったというエピソードはまさしくアメリカの強大さを印象付けました。
 著者はインド出身なのでネール首相やガンジー首相の記述は当然多かったのですが、最後のポストアメリカというところの記述が少なかったのが少々物足らなかったところです。
 いずれにしても、もうアメリカ帝国主義は今後は成り立たないという前提です。クリントン政権とブッシュ政権の比較もしていますが、著者はクリントン政権でのやり方を支持されています。
 もちろん、ポストアメリカといってもアメリカ人としてのポストアメリカであって、コスモポリタンとしてのポストアメリカという視点ではありません。
 気になるところは日本はこのポストアメリカでどう捉えられているかといことでしたが、ドイツと日本は同じレベルの過去形の扱いであり、ポストアメリカンについて語っている最終章でも登場していませんでした。ポストアメリカではBRICSとアメリカ、その他の諸国という位置関係での記述になっています。
 この本がオバマ政権?マケイン政権?に対してインパクトを与えるかは判りませんが、ニューズウイークの記者の著作として考えると、やはりBRICSを中心としてアメリカは今後その権力の対象として行動していくのではないかと思います。
 ということを考えると、日本の独自性は日本自身で発信していくしかないと思います。現在の政府、国会をみていると厳しいところですね。