2008年11月8日土曜日

受注設計生産型製造業の付加価値アップ(第11回)技術管理

全体的に対策を検討するにあたっては一般的な業務機能区分ではなく事業管理分野別にみていくことにします。すなわち、技術管理分野(開発、設計)、営業管理(マーケット開発、商品企画)、販売管理(販売、CS)、生産管理(製造、調達)という区分となります。
 最初から難しいところからのお話になるのですが、製造業しかも受注設計生産型製造業ですからこの技術管理分野を始めにせざるを得ませんね。

1.開発について
 1-1.開発リスクについて
 受注設計型と言いながら、受注の都度開発していたのではやはり顧客のQCDの要求に間に合いませんね。従って、市場動向を見ながら(これは営業管理分野)先行開発していくことが重要になってきます。
 顧客が他社に先んじてQCDの優れた製品を市場にリリースしようとしているのですから当然ですよね。顧客市場がどこへ行こうとしているのかを捉えることが重要ですが、あまりにも選択肢が多いのが事実ですので、全て可能性のある分野に開発することは超大企業でも難しくなっています。
 例えば、デイスプレイ市場でみると液晶、プラズマデイスプレイ、有機EL、無機ELとSED(キヤノン)など多様になってきていますね。
 この成長分野のどれを選択するかが、会社としてのビジネスリスクとなります。市場規模で選択するのか、自社の技術力を中心にニッチ市場でトップシェアを狙えるかで判断することになりますね。
それで、選択したならばどの技術の方向に動くのかを2世代先くらいを見通しして、自社製品の中核となる要素技術の開発を先行することが必要となります。
 なぜ、2世代なのかというと展示会でもそうですが、1世代というのであれば今設備投資の対象として購入してもらいたいものになりますが、2世代先の製品を提示することによって顧客の安心感や期待感をもってもらうこともできるのですが、同時に実際に購入してもらうまでの技術開発リスクの低減にも結びつけることができますね。
 1-2.標準化について
  開発部門で標準化をおこなわなければ、設計部門では標準化はおこなえません。何故なら、設計は顧客要求をベースに設計するのですから、設計部門に顧客要求を満足させる為に必要な標準を作ることはできません。設計が一人だけであれば標準化ということはできるかもしれませんが、組織で設計している限り不可能と言わざるを得ません。
 要は開発部門は都度の設計に耐えうる標準のレゴブロックを用意することが必要なのです。受注設計生産である限り、製品一式の標準化はあり得ません。
 1-3.コスト企画について
  標準化をすることによりその標準化されたレゴブロックを積上げれば当然完成品としての製品コストが算出でき、製品の目標コストを達成できるかが想定できることになります。
 1-4.生産準備について
  標準化がされたのであればその生産に必要な生産技術であったり、調達先の確保ということが準備できることになりますね。
2.設計について
 2-1.プロジェクトマネジメントについて
  都度の受注設計ですから当然自社の技術者がどれだけ設計をこなせるかで、受注量が自動的に決まってきます。いくら、後工程である製造や調達に能力が余っていても、設計できなければ何もできません。
  したがって、設計者に設計をこなしてもらう為には、標準化がどれだけできているかも重要ですが、どんな設計スキルの人間をどう組み合わせていくのかと、設計期間という時間の要素をどう組み合わせていくかが重要となります。プロジェクトマネジメントという言葉は造船、石油プラントなどの数億規模以上もしくは情報システムの構築に適用される特殊なものと思われがちですが、都度の受注毎に小規模のプロジェクトマネジメント管理をすることが必要であると言えます。
 2-2.受注都度対応について
  開発の段階で標準化がされていることを前提としますが、世の中それだけではありません。特に、顧客がその市場でトップシェアを持っている場合は自社の開発よりもニーズを十分捉えている訳でですから、それに対応しないわけにはいきません。
 ただし、どこまでどのように対応するのかはDR(デザインレビュー)が、どうしても必要となってきます。開発段階でのDRは当然なのですが、受注設計生産型製造業ではこのDRの機能が全く機能していないところが最も重要なところです。
 先程どれだけ受注設計をこなせるかを述べさせて頂きましたが、このDRをおこなうことにより同時にプロジェクトマネジメントをおこなうことになります。単に、設計する人間を割り当てるのではなく顧客の要求仕様を理解し、設計上の問題点を具体的に展開し、図面化されたアウトプットをチェックすることが必要となります。
 DRができる体制と人材を養成しておくことが重要ですね。形骸化させず、属人的な判断をできるだけ排除することによって客観的に判断することができるようになっていきます。

やっぱり、重くなってきましたね。というところで今日のところはこれまで、また次回へ。

2008年11月5日水曜日

受注設計生産型製造業の付加価値アップ(第10回)取り組み方

 今まで長きに渡って受注設計生産型製造業の課題について部門機能単位にその課題というか一般的な事象について説明させて頂きました。というところで、当然付加価値をアップし企業として継続していく為には改革と継続的な改善をおこなわなければなりません。
その取り組み方法については登山と同様にどのルートを選ぶかはその企業個々に異なるはずですが、最終的には最上流から変えていかないと定着はしないということに帰結します。
 最上流とは何かというと開発・設計と営業ということになります。今までコンサルティングをおこなってきた企業でも最もネックとなるのがこの業務機能分野です。今年も設計の部門長がこんりんざい部品構成表を作る気はないと宣言され全くあきれはててしまいました。(この企業には内部統制体制構築の支援をしていましたので本業の改革は後回しにしていましたが)

1.取り組み方について
 効果の出し易い業務領域から進めるという方法と設計・開発、営業から始める方法と2種類あると思われます。いずれの場合でも重要なことは自社の全体としての課題認識を踏まえて開始することです。特に、社長、役員を始めとした各部門長レベルでの再認識活動と変革活動は必須です。これは、初期段階だけではなく毎年継続的に実施しなければ意味がありません。
 バネを変形させようとしたら元に戻る力は判りますよね。どんどん変革が進んでいっても、必ず元に戻ろうという力が働きます。更に変革に推し進める(=継続的な改善が自発的におこなわれる)ようになって初めて活動が定着したと言えます。

2.社長役員のレベルでの活動について
 社長、役員レベルの初期段階の活動では、改革、改善の為のプロセスの企画を立案することになります。すなわち、自社の課題を再認識し、自社のあるべき姿と現状とのギャップを把握することによって、改革、改善すべき活動項目とその進め方の企画と実行計画を実行責任者と進捗管理体制を明確に定めることになります。
 自らの頭で手で書くことが重要です。偉い人が陥りがちなのは言葉で他人を論破しようとすることですが、文字、文章で考え方を表現しようとすると書けないのです。書いて判るようにするにはどうするかを考えると本当に上っ面ではなく物事の本質を捉えることが前提であるということに気づくことになります。

3.改革改善の為の企画からの展開
 企画ができた段階で開発・設計、営業のもっとも難しい部門から正攻法で立ち向かうのが良いのか、改善策を出し易い部門、分野でゆっくりと改革、改善活動を進めるのかが明確になっているはずです。次はどちらの方策で進めるにしてもこの部門に更に実務担当者が実行できるように更に具体的に展開できる実行計画を社長、役員レベルでおこなったのと同様の方法で立案し、自らの課題として取り組んでもらうことが必要です。
 また、当然ながら役員や部門長はその活動を順調に進める為に支援し、場合によっては部門をまたぎ支障となっている課題を解決していかなければなりません。

 ということで、次回は部門をまたぎながらどう改革、改善を進めていくのか?の各論を進めていきたいと思います。

2008年11月2日日曜日

受注設計生産型製造業の付加価値アップ(第9回)カスタマーサービス課題

前回は調達ということで製造を合わせて顧客への製品引渡しが完了したというところまでの課題について述べさせて頂きました。今回は今までアフターサービスと呼ばれていたカスタマーサービス機能での課題について述べていきたいと思います。
元来、アフターサービスという用語は製品を販売した後の供給側の論理から生まれた用語ですよね。カスタマーサービスという用語も詳しく分析してみるとカスタマープロフィットサービスとなるべきです、何故なら顧客は装置たる製品を購入したもしくは設置した時点では何もこの製品から生まれる価値を全く享受していないのですから。
すなわち、製品を稼動させて顧客の製品を生み出して始めて価値が生まれ市場から利益を回収できるのです。たしかに装置たる製品を販売した製造業からみると売上計上後の保守メンテナンスを中心としたサービスですが、購入した顧客にとっては稼動させて廃棄するまでがその製品の価値です。
 装置たる製品を購入する時点で購入する顧客はイニシャルである製品の購入価格とランニングコスト(=保守・消耗部品の累計価格+電気水道ガス、オーバーホールなどの維持管理費用)、生産されるであろう製品の産出量と装置の稼動期間を計算して利益がでるであろうことを評価しているのです。

 といった具合で販売する側と購入する側の利益に関する立場が180度異なることを意識しながら、このカスタマーサービスの課題について考慮していかなければなりません。

1.保守・消耗部品について

 製品が顧客要求に対応する為に技術革新に応じてバージョンアップされ続けていくだけでなく、受注設計生産ということから顧客毎もしくは納入毎に異なる仕様の製品が設計され出荷されていくことになります。この結果、装置が出荷される度に保守・消耗部品が増え続けていきます。
ひどい場合は都度設計ですから部品の寿命や使用環境を全く考慮していない設計の為に、設計時点では保守・消耗部品として認識されないことも多く発生します。従って、顧客からこの部品が壊れてしまって装置が稼動できない!という大きなクレームになってしまいます。
 そうすると、直ぐ調達できる部品であれば良いのですが、受注生産の製品であったり生産中止部品となってしまっているとなると事は更に大きな問題となります。修理のはずが、改造して代わる機能を持つ部品にしなければならなくなってしまいます。
 ここにおいて問題になるのが、装置を販売した製造業側の対応力です。「部品が壊れた。」という事象に対してどう判断し、対応できるか?ということです。たまたま電話をとった担当者が理解できなければあっちこっちと知っていさそうな人に確認し、在庫を確認し・・・と電話を受け取ってからとんでもない時間が経過していくことがありえます。

 当該装置の出荷時点での部品構成表がちゃんとメンテナンスされデータベースとして管理されていなければ、もうとんでもない労力が発生することは明らかですし、顧客の怒りは爆発してしまいますよね。
 保守・消耗部品リストが作られて出荷されている場合であっても、継続的にメンテナンスできている製造業がどれだけあるでしょうか?家電品や自動車のような量産品であればメンテナンスはできるはずですが・・・。

2.修理作業について

 保守・消耗部品がこの状態ですから、修理作業はもっと大変ですね。
装置ですので家電品や自動車のように引き取ってもしくは顧客に出向いてもらってということはほとんどなく、装置が設置されている現地での修理作業となります。
 出荷時の部品構成表が最新の状態でメンテナンスされれば良いのですが、ない状態でサービスマンが現地に不具合が発生しているだろう部品をかかえて計測装置や工具をかかえていくのですが、現地に到着した時点でそれが適合しないということも発生してしまいます。
 顧客での装置停止時間を最短にする為に社内で確認できる時間は限られていますので、ある程度想定はしていますが、原因が異なった場合だけでなく、あるべき部品が装置になかったりもしくは全く異なる部品が取り付いていたりします。
 また、設計段階で保守・消耗部品として考慮していないとメンテナンスを全く考慮されていないので修理作業が全くできないということも発生してしまいます。
 極端な例ばかり申し上げているようですが、特に想定以上に長期間使用されているとまさしくとんでもないことも発生してしまいます。
 新製品の場合には仕掛中の製品から当該部品を引き剥がして持ち込み修理することもよく発生してしまいますね。

3.費用の回収と損害賠償について

保守・消耗品の場合は継続的に顧客が購入してもらえますので、コンスタントな収益源となってくれます。所謂、スマイルカーブと言われる製品の収益カーブの最も右側の収益の柱となるものです。顧客が装置を使い続けてもらっているうちは浮気はできないのですからね。コピー機やプリンターのトナーやインクの場合は本体の収益よりもこれによる収益のほうが大きくなっていますね。

もちろん、修理も定期メンテナンスサービスとして定期的な事前予防としてのオーバーホールを実施できるような契約ができていればこれも同様な収益源となります。しかしながら、エレベーター業界のように修理専門の業者がでてくると問題が大きくなってきます。これも、装置としての市場が大きくなってくるとやむを得ない市場参入となるでしょう。エレベーターの場合は製造御者と修理業者の情報交換がされないことから死亡事故などが発生しています。

 理想を言えば上記のとおり装置メーカーはこのカスタマーサービスで潤うはずなのですが、保守・消耗部品が直ぐ届かないもしくは適応しない部品が送付されたり、修理サービスに直ぐ来ないもしくは一度で直せないなどという状態が続くと費用の支払にも影響が当然でてしまいます。直せないのであれば支払えないという顧客の当然の理屈なのですが、場合によっては顧客が失った仕掛品の損失補償や休業補償を求められることがあります。

4.保守メンテナンス拠点の要求について

 装置製品の出荷が顧客の海外への生産移転や中国の地元企業が生産を開始するなどなってきますと、保守・消耗部品と修理の供給の兵站線が長くなってきます。すなわち、保守・消耗部品の発注から納入および修理の要求があってから現地で修理が実施できるまでの時間が長くなってしまいます。また、顧客のほうも生産コストをあげずに海外で生産したいので、社内の保守メンテナンス部隊をかかえたくないという要求となりますし、中国の現地法人では対応できる人材の定着率が悪すぎて、保守メンテナンス方法を教えても意味がないということになってしまいます。

したがって、保守・消耗部品だけでなく修理メンテナンス要員を社外にきめ細かく設置することが必要となってきますね。海外ですと輸出入手続きに関わる要員も含めてかなりの設備投資となるはずです。

いままで営業、設計、製造、調達、カスタマーサービスと長々とその課題のあらましについて述べてきましたが、今後は対応策について述べていきたいと思います。